Ichisi Group, Mie Prefecture, Japan
Early Miocene
ver. 1.0

不明


17 mmH
indet.




メガロドン


63 mmH
Carcarocles megalodon

一志層群

産地の小川の川底に沈んでいた石を多数持ち帰り、化石を取り出そうとした．ここの堆積岩は非常に硬く、割ればもともとクラックの多い、多数を占める、小さな化石を簡単に破壊してしまうことが多かった． またその小さな歯のクリーニングは難物で、ギブアップは早かった． 放置したまま10年以上経過した． しかし初期中新世一志層群化石サメ類の群集構成の解明は魅力的なので、今回改めて剖出に挑戦した．得られた化石は約100本．群集構成を明らかにするには少ないが、まとめてみた．

メジロザメ躍進の時代

一志群集構成成分はメジロザメ属が最も多くて72%、次に多いイスルス属を加えると両者で87%になる．この合計値は中新世後期の千畑層のそれとよく似ている． その他のマイナーな属構成成分も類似性があるが、全般的にはより単調な群集だと思う．　 メジロザメ属とイスルス属は中新世1800万年の全期間を通じて繁栄を誇っていたようだ．　ところで千畑層では両属ほぼ同数得られたが、一志ではメジロザメの方がイスルス属を大きく凌いでいる． 深海やごく浅い堆積物の地層を除き、中新世の暖かい海で優勢なこの2属は各産地によりその比に違いがあり、 一般的にはメジロザメの方が優勢だ．　中新世前期の一志群集構成成分ではメジロザメ属に最も興味がひかれる．漸新世(芦屋層群）では、あまり目立たないこの種が次の中新世前期（一志）では群集中最多の種数と数を誇っており、繁栄していた．　

鋸歯を持たないメジロザメ

ここでは取り出したメジロザメの約50%のものに鋸歯がない．　現生メジロザメでは鋸歯を持たないものは普通ではないにしてもそれほど珍しくはない．　下顎歯に鋸歯を持たないものは6種． 内、上顎歯も鋸歯がないものは、よく知られているホコサキを含めて、2ないし3種． ただし それらの上顎歯は咬頭に鋸歯はないが、踵には粗い鋸歯もしくは小咬頭があることもある．上顎歯のみに鋸歯がない種は存在しない(FAO)．　また、実際に調べてみると、これら以外にも下顎前歯にのみ鋸歯を持たないメジロザメも存在する．ただし、接合歯に鋸歯がないものは考慮していない．

上顎歯に鋸歯を持たないホコサキやシグナタスまた下顎歯に鋸歯を持たないハナザメやクロトガリザメなどの現生のものと比較しているが、同定はそれほど簡単なことではないようだ．現生の鋸歯を持たないメジロザメでは歯に変異がある． たぶん、別属のレモンザメ（ネガプリオン）類のように、成体と幼体では鋸歯の有無や歯の形状に違いがあるのだろうと考えている．　上顎歯はまだしも、下顎歯に鋸歯がないものは、特殊な形態の歯を除き、同定は難しそうだ． なお、一志の鋸歯を持たないメジロザメに微小なものが多いのは幼体の歯だからだろう．また、鋸歯を持つものでも小型のものが多いようだ．

一志で多くみられるこのような鋸歯のない歯と類似する歯は瑞浪層群にも多くあり、それらを ""付きの ネガプリオン ("Negaprion" cfr. acanthodon)　とし、形態的にはヘミオドン (旧Apriodon hemiodon, 現Carcharhinus hemiodon) に似るものもあるとする報告があります． (瑞浪層群の化石　瑞浪市化石博物館専報　Plate 7 第5号　1985)

20080411 FUMIO NAKAGAWA

HOME

J-elasmo
サメの歯化石館